
はじめに
小泉前農水相のもとで進められたコメの増産政策は、鈴木農水相の就任に伴って撤回され、来年度はコメが減産される見込みです。コメの減産政策は果たして国民のためになるのでしょうか?私は、この政策は長期的には誰のためにもならないと考えます。以下ではこのことについて詳しく説明します。
目次
コメの減産がコメの価格と取引量に与える影響
この章では、コメの減産政策がコメの価格と取引量に与える影響について論じます。結論から言うと、コメの減産政策は、コメの価格を上げ、コメの取引量を減らします。これは、コメの減産に伴うコメの需要曲線と供給曲線の変化を考えれば分かります。
まず、需要曲線については、下図のように、特に変化がないでしょう。なぜなら、コメを減産したからといって消費者の所得や好みが変化するとは考えづらいためです。

次に、供給曲線については、下図のように、左にシフトするでしょう。なぜなら、価格によらず供給量が目標値程度になるよう政策により調整されるためです。

市場におけるコメの価格と取引量は、上図の需要曲線と供給曲線の交点で与えられます。そこで下図を見ると、減産政策によりコメの価格は上がり、取引量は減ることが分かります。

鈴木農水相は、コメの量については事実上の減産方針を掲げつつ、価格については市場が決めるものと言って、あたかもコメの価格を作為的に上げる意図が無いような印象を与えています。しかし、実際には、上記のとおり、コメの供給とコメの価格は連動しているわけで、政府はコメの供給をコントロールすることによって、価格を作為的につり上げようとしていると言えます。
短期の分析
前章では、政府はコメの減産政策を通してコメの価格をつり上げようとしていると説明しました。では、この価格のつり上げは誰のためになるのでしょうか?答えは、「少なくとも短期的には、生産者であるコメ農家のためになる」です。以下ではこのことについて説明します。
多くの日本人にとって、コメは必需品に近いです。そのため、短期的に見れば、コメの価格が上昇しても需要量はあまり減らないでしょう。したがって、下図のように取引量もあまり減りません。

これは、生産者であるコメ農家にとって都合の良い話です。なぜなら、これまでとあまり変わらない量のコメが、これまで以上に高く売れることになり、彼らの収入は増えるからです。
一方で、これは消費者にとって都合の悪い話です。なぜなら、これまでとあまり変わらない量のコメを、これまで以上に高い値段で買わなければならないからです。
このように、少なくとも短期で見た場合、コメの減産政策は、消費者の犠牲の上に生産者を利するものであるといえます。鈴木農水相が山形県を選挙区とする自民党議員であることを考慮すると、このような生産者側に立った政策を推進するのもある意味納得です。なぜなら、自民党と農協は緊密な関係にあり、さらに山形県は日本有数のコメの産地だからです。選挙で勝つためには生産者の側に立たざるを得ないのでしょう。
長期の分析
前章では、コメの減産政策は、少なくとも短期的には、消費者の犠牲の上に生産者を利するものであると述べました。では、長期的にはどうでしょうか?実は長期的には生産者の利益にすらならない可能性もあるのです。以下ではこのことについて説明します。
前章でも述べたように、多くの日本人にとって、コメは必需品に近いです。しかし、コメの価格が高い状態が長期にわたって続いた場合、消費者は、コメの代わりにパンや麺を求めるようになったり、輸入米を求めるようになったりするでしょう。したがって、長期的に見れば、コメの価格の上昇によってコメの需要量が大きく減ることになります。こうなると、下図のとおり、取引量も大きく減ってしまうことになります。

これは、生産者にとって都合の悪い話です。なぜなら、コメの価格の上昇による収入増加の効果が、コメの取引量の減少による収入減少の効果に負けてしまうからです。短期的には生産者の収入が増えるものの、長期的には市場そのものが縮小し、生産者の収入が減ってしまうわけです。
おわりに
今回の記事では、鈴木農水相のコメ政策の是非について論じました。短期と長期の分析の結果、この政策は、短期的には消費者の犠牲の上に生産者を利する一方、長期的には生産者のためにもならない可能性があることが分かりました。タンバ経済研究所では、これからも経済に関する情報を発信していきます。今回の記事をここまで読んでくださった方は、ぜひコメントなどしてください!とても励みになります!