
はじめに
完全競争的な生産経済では、競争均衡においてパレート効率性が成り立ちます。今回の記事では私的所有経済というモデルを使って、このことを示します。ぜひ最後まで楽しんで読んでくださいね!
なお、完全競争、競争均衡、パレート効率性という言葉になじみのない方は、この記事を参照してください。また、今回の記事より先に、この記事を読んだ方が、今回の記事を理解しやすいかもしれません。
目次
財についての仮定
今回の記事では、この記事と同様の財についての仮定をおきます。つまり、この世の中には2種類の分割可能財しかないと仮定します。
私的所有経済
私的所有経済とは、生産者(=企業)が消費者(=株主)に完全に所有され、生産者の利潤が消費者に全て分配されるような経済を指します。いま、この経済において、人の消費者と
人の生産者がいるとします。また、消費者
が持つ生産者
の所有権の割合を
とし、生産者
の利潤を
とします。この時、生産者は消費者に完全に所有されているので、
です。また、各生産者から消費者に分配される利潤の合計は
です。
生産者の定式化
今回の記事では、生産者の生産活動を、
で表すこととします。ここで、
は、その値が正の時は財1の生産量、負の時は投入量を意味します。同じく、
は、その値が正の時は財2の生産量、負の時は投入量を意味します。常にどちらか一方が生産財で、他方が投入財となるので、
と
が同時に正になったり負になったりすることはありません。
さて、生産者が実現できる
の集合は、
平面で曲線を成すはずです。この曲線の式は、
のような形で表せます。このを変形関数といいます。また、上式で表される曲線のことを変形曲線といいます。変形曲線の例を下図に示します。

では財1が投入され、財2が生産されています。一方、点
では財2が投入され、財1が生産されています。このような逆生産は無くても良いですが、より一般性を持たせるために、ここでは図示しました。また、財の投入がない時は、財の生産もないため、変形曲線は原点を通ります。
ところで、完全競争市場において、生産者は財1、財2の価格
を所与のものとして受け入れ、利潤を最大化しようとします。したがって、財1、財2の生産量(あるいは投入量)は、
のもとでの利潤
の最大化問題
の解として求めることができます。ここで、下図のようにが一定の直線を複数引くと、直線が変形曲線と接するところで、
が最大になることが分かります。

では、
が成り立っています。ここで、は限界変形率といって、
における変形曲線の局所的な傾きの絶対値です。ただし、今回の記事では、生産者の生産技術は収穫逓減であるとします。なぜなら、この記事で述べた通り、収穫一定や収穫逓増の場合は、利潤が最大化できずに無限に発散することがあるからです。
このようにして求まったを以下では
と書くことにします。また、この時の最大化された利潤を
と表すことにします。
消費者の定式化
この記事で扱った純粋交換経済では、消費者の所得は、財1、財2の初期保有量を
とすると、
で表されました。私的所有経済では、ここに、各企業から分配される利潤も加わります。つまり、消費者
の最終的な財1、財2の保有量を
とすると、予算制約式は、
となります。
完全競争市場において、消費者の最終的な財の保有量は、上記の予算制約式のもとでの効用最大化問題を解くことで求められます。効用最大化問題について詳しく知りたい方は、この記事を参照してください。このようにして求まったを、以下では
と書くことにします。
競争均衡
私的所有経済で完全競争市場が成立しているとき、消費者と生産者
は、財の価格
に対して、需要
および供給
で反応します。競争均衡価格
においては、財の需給が一致するので、
が成り立ちます。
実現可能な資源配分とパレート効率性
全てのと
の組
を資源配分といいます。資源配分が実現可能であるためには、次の二つの式を満たさなければなりません。
1番目の式は、財の需給が一致していることを意味します。2番目の式はは生産者
の生産技術の制約を受けることを意味します。
そして、私的所有経済において、ある実現可能な資源配分がパレート効率的であるとは、誰の効用も犠牲にせず、誰かの効用を改善するような他の実現可能な資源配分が存在しないことを意味します。
完全競争的な私的所有経済の競争均衡におけるパレート効率性
この章では、完全競争的な私的所有経済の競争均衡においてパレート効率性が成立することを証明します。証明の方針としては、背理法を用います。つまり、競争均衡においてパレート効率性が成り立たないと仮定したうえで、矛盾を導きます。
さて、競争均衡における資源配分がパレート効率性を満たさないと仮定します。すると、誰の効用も犠牲にせず、誰かの効用を改善するような他の実現可能な資源配分が存在することになります。そのような資源配分をとおくことにします。すると、この記事と同様の議論から、すべての
について、
が成り立ちます。さらに、あるについては、
が成り立ちます。したがって
です。ここで、より、
となります。また、は最大化された利潤であることから、
なので、
より、
となります。
ところが、は実現可能な資源配分であるため、
が成り立つはずなので、
とならなければなりません。これは矛盾です。したがって、競争均衡における資源配分はパレート効率的でなければなりません。
おわりに
今回の記事では、生産経済の例として私的所有経済を取り上げ、競争均衡においてパレート効率性が成り立つことを示しました。タンバ経済研究所では、これからも経済学に関する情報を発信していきます。今回の記事をここまで読んでくださった方は、ぜひコメントなどしてください!とても励みになります!