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【ミクロ経済学(11)】生産者の費用最小化とは? ~その定式化、および、利潤最大化との関係~

はじめに

 経済学において、生産者の費用最小化はどのように定式化されるのでしょうか?また、費用最小化はこの記事で紹介した利潤最大化とはどのような関係にあるのでしょうか?今回の記事を読めば、その概要を知ることができます。ぜひ最後まで楽しんで読んでくださいね!

 なお、今回の記事では、この記事の財についての仮定を引き継ぎます。

目次

費用最小化

 経済学では、投入財1、投入財2の価格 w = (w_1, w_2)が与えられたとき、生産量 yを達成するための最小の費用や、最小の費用を実現する投入財1、投入財2の投入量 x = (x_1, x_2)を考えることがあります。これを費用最小化問題といいます。

 後でみるように、費用最小化問題は、この記事で取り上げた利潤最大化問題の一部になっています。しかし、利潤最大化問題の場合と違い、費用最小化問題を考えるにあたっては、生産者は投入財に関してのみ価格受容的である必要があるだけで、生産財に関してはその必要はありません。したがって、生産財市場が完全競争的でない場合も、費用最小化問題を考えることはできるのです。

 この章では、そのような費用最小化問題について論じます。ただし、以下では議論を長期と短期に場合分けします。ここで、長期とは、生産者があらゆる投入財の量を変化させられるような状況のことです。また、短期とは、一部の投入財の量しか変化させられないような状況のことです。

長期

 この節では、長期の費用最小化問題について論じます。

 まず、費用最小化問題が利潤最大化問題の一部になっていることをみます。いま、生産財の価格を p、生産者の生産関数を f(x)とすると(「生産関数って何?」という方は、この記事を参照してください)、利潤最大化問題は、

 \displaystyle \begin{align}
        \max_{(x, y) \in Y}(py - w \cdot x) &=  \max_{y \ge 0} \left\{\max_{x_1 \ge 0, x_2 \ge 0, f(x) \ge y} (py - w \cdot x)\right\} \\
        &= \max_{y \ge 0} \left(py - \min_{x_1 \ge 0, x_2 \ge 0, f(x) \ge y} w \cdot x\right) \\
        &= \max_{y \ge 0} (py - C(w, y))
    \end{align}

のように式変形できます。ただし、

 \displaystyle C(w, y) = \min_{x_1 \ge 0, x_2 \ge 0, f(x) \ge y} w \cdot x

とおきました。この関数は、生産量 yを達成するための最小の費用であり、費用関数と呼ばれます。また、この最小値を与える x = x(w, y)を、条件付き要素需要関数といいます。定義より、

 C(w, y) = w \cdot x(w, y)

です。このように、利潤最大化問題の一部として、費用最小化問題が登場します。

 次に、費用最小化の条件式をみていきます。そのために、 f(x) \ge yを満たす xの集合の典型的な形状を、下図のとおり x_1x_2平面上に図示します。

等量曲線と等費用直線の接点が費用を最小化する
また、上図には w \cdot xが一定となる直線を複数引いています。これを、等費用直線といいます。図を見ると、等費用直線が、等量曲線 f(x) = yに接する場合に、費用が最小となることが分かります(「等量曲線って何?」という方は、この記事を参照してください)。したがって、

 \displaystyle \begin{gather}
        &f(x) = y, \\
        &MRTS(x) = \frac{w_1}{w_2}
    \end{gather}

が費用最小化の条件式となります(「 MRTSって何?」という方は、この記事を参照してください)。

短期

 この節では、短期の費用最小化問題について論じます。短期においては、生産者は一部の投入財の量しか変化させられません。仮に投入財1の量のみ変化させることができ、投入財2の量は \bar{x}_2から動かせないとします。

 このとき、長期の場合と同様に、費用最小化問題は、利潤最大化問題の一部として現れます。具体的には、

 \displaystyle \begin{align}
        &\max_{(x, y) \in Y, x_2 = \bar{x}_2}(py - w \cdot x) = \max_{y \ge 0} (py - C(w, \bar{x}_2, y)), \\
        &C(w, \bar{x}_2, y) = \min_{x_1 \ge 0, x_2 = \bar{x}_2, f(x) \ge y} w \cdot x
    \end{align}

というような形で現れます。ここで、 C(w, \bar{x}_2, y)短期費用関数といいます。また、この最小値を与える x = (x_1(w, \bar{x}_2, y), \bar{x}_2)短期条件付き要素需要関数といいます。定義より、

 C(w, \bar{x}_2, y) = w_1 x_1(w, \bar{x}_2, y) + w_2 \bar{x}_2

です。

 上記の最後の式を見ると、短期費用関数は、生産財の生産量 yに応じて変化する項と、 yに応じて変化しない項の和として表されることが分かります。前者を可変費用といい、後者を固定費用といいます。

平均費用と限界費用

 この章では、短期費用関数に関連する概念として、平均費用と限界費用を紹介します。

 前章の結果を思い出すと、短期費用関数 C(y)は、可変費用 VC(y)固定費用 FCを用いて、

 C(y) = VC(y) + FC

と表せるのでした。ただし、ここで w \bar{x}_2は定数であるとして表記を省略しました。

このとき、

 \displaystyle \begin{align}
        AC(y) &= \frac{C(y)}{y} \\
        &= \frac{VC(y)}{y} + \frac{FC}{y} \\
        &= AVC(y) + AFC(y)
    \end{align}

平均費用といいます。さらに、 AVC(y) = \frac{VC(y)}{y}平均可変費用 AFC(y) = \frac{FC}{y}平均固定費用といいます。 一方、

 MC(y) = C'(y) = VC'(y)

限界費用といいます。

 平均費用、平均可変費用限界費用の関係は、下図のようになります。

平均費用、平均可変費用限界費用の関係
まず、平均固定費用の分だけ、平均費用の方が、平均可変費用よりも上側にあります。そして、 yが大きくなるほど、平均固定費用が小さくなるので、平均費用と平均可変費用が近づきます。そして、平均費用や平均可変費用がU字型の底を持つ場合、限界費用はその底を通ります。これは平均費用や平均可変費用微分することで分かります。例えば、平均費用を微分すると、

 \displaystyle \begin{align}
        AC'(y) &= \frac{C'(y)}{y} - \frac{C(y)}{y^2} \\
        &= \frac{1}{y}(MC(y) - AC(y))
    \end{align}

となり、 AC'(y) = 0において、 MC(y) = AC(y)となります。平均可変費用についても同様です。

利潤最大化

 この章では、短期費用関数を用いて、完全競争市場における生産者の短期の利潤最大化について論じます。

 これまで見てきたように、短期の利潤最大化問題は、短期費用関数を用いて、

 \displaystyle \max_{y \ge 0} (py - C(y))

という形で表されます。 これを解くことにより、

 y = S(p)

なる関係式が求められます。これを供給関数といいます。

 いま、平均費用、平均可変費用限界費用が下図のようになっているとします。

平均費用、平均可変費用限界費用
すると、

 py - C(y) = y(p - AVC(y)) - FC

なので、生産財の価格 pが平均可変費用の底よりも低い場合、 y \gt 0ならどれだけ生産財の生産を頑張っても利潤が y=0の場合を下回ります。したがって、このとき、

 y = S(p) = 0

となります。このことから、平均可変費用の底を操業停止点といいます。

 一方、 pが平均可変費用の底以上の場合、適切な y \gt 0によって利潤が最大化されます。その条件は、利潤の yによる微分が0というものです。つまり、

 p = MC(y)

です。ただし、

 py - C(y) = y(p - AC(y))

なので、 pが平均費用の底より低い場合、赤字は出てしまいます。このことから、平均費用の底を損益分岐点といいます。

おわりに

 今回の記事では、費用最小化問題について論じました。タンバ経済研究所では、これからも経済学に関する情報を発信していきます。今回の記事をここまで読んでくださった方は、ぜひコメントなどしてください!とても励みになります!