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【ミクロ経済学(10)】生産者理論ことはじめ ~生産技術と利潤最大化~

はじめに

 経済学において、生産者はどのようにモデル化されるのでしょうか?今回の記事を読めば、その概要を知ることができます。具体的には、今回の記事では、生産者の生産技術を特徴づける概念である、生産可能集合と生産関数を紹介します。また、生産技術の分類についても紹介します。さらに、生産者の利潤最大化についても論じます。ぜひ最後まで楽しんで読んでくださいね!

目次

財についての仮定

 この章では、生産者が投入する財(投入財)と、生産する財(生産財)についての、今回の記事における仮定を述べます。

 まず、投入財について、財の種類は2種類とします。それぞれを投入財1、投入財2ということにします。次に、生産財について、財の種類は1種類とします。そして、投入財、生産財ともに、分割可能財であるとします。「分割可能財って何?」という方は、この記事を参照してください。

生産技術、生産可能性集合、生産関数

 この章では、生産者の生産技術を特徴づける概念と、生産技術の分類を紹介します。

 いま、生産者が、投入財1と投入財2を x = (x_1, x_2)だけ投入したとします。このときに生産される生産財の量を yとすると、生産者の生産性が最低の場合、 y = 0です。一方で、生産性が最高の場合、 y = f(x)となるとします。すると、生産者が実現可能な x yの組み合わせの集合は、

 \{ (x, y) \mid x_1 \ge 0, x_2 \ge 0, 0 \le y \le f(x) \}

と書けます。これを生産可能性集合といいます。そして、生産可能性集合の境界を与える関数 f(x)生産関数といいます。投入財を投入しない時、生産財は生産されないはずなので、生産関数は、

 f(0) = 0

という性質を持ちます。

 生産関数の性質によって、生産技術は次の3つに分類されます。

  • 収穫逓減: 任意の実数 t > 1に対して、 f(tx) \lt tf(x)の場合
  • 収穫一定: 任意の実数 t > 1に対して、 f(tx) = tf(x)の場合
  • 収穫逓増: 任意の実数 t > 1に対して、 f(tx) \gt tf(x)の場合

つまり、投入財の規模の変化に伴う生産財の規模の変化の仕方によって生産技術を分類するわけです。

等量曲線、技術的限界代替率、限界生産力

 この章では、生産関数にまつわるいくつかの概念を紹介します。

 生産関数 f(x)が一定となる点の集まりは、 x_1x_2平面上で曲線を成します。これを等量曲線といいます。

 等量曲線の傾きの絶対値は、生産財の生産量を一定に保つとして、投入財1をわずかに増やしたら、投入財2をどれだけの比率で減らせるかを表します。これを投入財2の投入財1に対する技術的限界代替率といいます。記号では MRTSと表すことが多いです。

 技術的限界代替率は、この記事で紹介した限界代替率の効用関数による表現の導出と同様の議論により、生産関数を使って次のように表現できます。

 MRTS(x) = \dfrac{\frac{\partial f(x)}{\partial x_1}}{\frac{\partial f(x)}{\partial x_2}}

 この時、 \frac{\partial f(x)}{\partial x_1}を投入財1の限界生産力といい、 MP_1(x)などと表します。同様に、 \frac{\partial f(x)}{\partial x_2}を投入財2の限界生産力といい、 MP_2(x)などと表します。限界生産力を使うと、技術的限界代替率は、

 MRTS(x) = \dfrac{MP_1(x)}{MP_2(x)}

と表せます。

利潤最大化

 完全競争市場において、生産者は投入財の価格 w=(w_1, w_2)生産財の価格 pを受け入れるしかありません(「完全競争市場って何?」という方は、この記事を参照してください)。そして、その上で利潤 py - w \cdot xを最大化しようとするでしょう。この章ではこの利潤最大化について論じます。ただし、以下では議論を長期と短期に分けて進めます。ここで、長期とは、生産者があらゆる投入財の量を変化させられるような状況のことです。また、短期とは、一部の投入財の量しか変化させられないような状況のことです。

長期

 まずは長期から考えましょう。長期においては、生産者はすべての投入財の量を変化させることができます。したがって、生産可能性集合を Yとおくと、利潤最大化問題は、

 \displaystyle \begin{align}
        \max_{(x, y) \in Y}(py - w \cdot x) &= \max_{x_1 \ge 0, x_2 \ge 0} \left\{\max_{0 \le y \le f(x)} (py - w \cdot x)\right\} \\
        &= \max_{x_1 \ge 0, x_2 \ge 0} (pf(x) - w \cdot x)
    \end{align}

を考えればよいことになります。つまり、 x_1 \ge 0,  x_2 \ge 0のもとで

 \pi(x) = pf(x) - w \cdot x

の最大化を考えるわけです。 ここで、 \pi(0) = 0ですから、 \pi(x)の最大値は少なくとも 0以上です。

一般的には、 x = 0が最大値を与える唯一の点の場合もあり得ます。この場合、生産者は何もしないのが最適ということになります。以下では、そうでない場合、すなわち、少なくとも一つの x = x^\ast \ne 0において、最大値を取る場合を考えます。ただし、生産技術が収穫逓増、収穫一定、収穫逓減の場合に分けて論じます。

収穫逓増

 収穫逓増の場合、利潤は最大値を取らず、無限に大きくなることが次のようにして分かります。

 いま、仮に x = x^\ast \ne 0において \pi(x) 0以上の最大値を取ったとします。すると、任意の実数 t \gt 1について、

 \displaystyle \begin{align}
        \pi(tx^\ast) &= pf(tx^\ast) - w \cdot tx^\ast \\
        &\gt ptf(x^\ast) - w \cdot tx^\ast \\
        &= t(pf(x^\ast) - w \cdot x^\ast) \\
        &\ge pf(x^\ast) - w \cdot x^\ast \\
        &= \pi(x^\ast)
    \end{align}

となります。これは、 \pi(x^\ast)が最大値であることに矛盾します。よって、生産技術が収穫逓増の時は \pi(x)は最大値を取らず、無限に大きくなります。

 これが意味するところは次のとおりです。生産技術が収穫逓増である時、そのような生産者は投入財の規模を大きくすることによってどんどん利潤を大きくすることができます。やがてそのような生産者は市場の支配力を持ちます。そうなると、もはや完全競争市場の仮定が成り立ちません。つまり、完全競争市場と収穫逓増は整合しないのです。ですから、収穫逓増の場合に完全競争市場を仮定して利潤最大化を考えることは適切ではありません。

収穫一定

 収穫一定の場合は、さらなる場合分けが必要です。

 まず、最大値を与える x = x^\ast \ne 0について、 \pi(x^\ast) = 0の場合、

 \displaystyle \begin{align}
        \pi(tx^\ast) &= pf(tx^\ast) - w \cdot tx^\ast \\
        &= ptf(x^\ast) - w \cdot tx^\ast \\
        &= t(pf(x^\ast) - w \cdot x^\ast) \\
        &= 0 \\
        &= \pi(x^\ast)
    \end{align}

より、最大値を与える xは無数にあります。ただし、そのような xにおいて利潤は常に 0です。

 次に、 \pi(x^\ast) \gt 0の場合、

 \displaystyle \begin{align}
        \pi(tx^\ast) &= pf(tx^\ast) - w \cdot tx^\ast \\
        &= ptf(x^\ast) - w \cdot tx^\ast \\
        &= t(pf(x^\ast) - w \cdot x^\ast) \\
        &\gt pf(x^\ast) - w \cdot x^\ast \\
        &= \pi(x^\ast)
    \end{align}

より、矛盾が生じるので、収穫逓増の場合と同様に、利潤は無限に大きくなります。したがって、このような場合に完全競争市場を仮定して利潤最大化を考えることは適切ではありません。

収穫逓減

 収穫逓減の場合は、通常、収穫逓増、収穫一定のような特殊な状況(最大値がない、または、最大値を与える xが無数に存在する)を考える必要はありません。

 よって、利潤最大化のための条件は、 \pi(x) x_1,  x_2偏微分した値が 0になるというものになります。すなわち、

 \displaystyle \begin{align}
        pMP_1(x) &= w_1,\\
        pMP_2(x) &= w_2
    \end{align}

です。

 これを解くことによって得られる xの値 x(p, w)要素需要関数 yの値 y(p, w) = f(x(p, w))供給関数といいます。

短期

 次に短期の場合を考えましょう。短期においては、生産者は一部の投入財の量しか変化させられません。仮に投入財1の量のみ変化させることができ、投入財2の量は \bar{x}_2から動かせないとします。

 このとき、利潤最大化問題は、

 pf(x_1, \bar{x}_2) - w_1x_1 -w_2\bar{x}_2

の最大化を考えればよいことになります。 よってその条件は、上式を x_1偏微分したものが 0になるというものになります。つまり、

 pMP(x_1, \bar{x}_2) = w_1

です。

 これを解くことにより得られる x_1 = x_1(w, \bar{x}_2)短期要素需要関数といいます。また、その時の y = y(p, w, \bar{x}_2) = f(x_1(w, \bar{x}_2), \bar{x}_2)短期供給関数といいます。

おわりに

 この記事では、生産者の生産技術を特徴づける概念として、生産可能性集合と生産関数を紹介しました。また、生産関数が持つ性質による生産技術の分類(収穫逓減、収穫一定、収穫逓増)も紹介しました。さらに、完全競争市場を念頭に、生産者の利潤最大化について論じました。タンバ経済研究所では、これからも経済学に関する情報を発信していきます。今回の記事をここまで読んでくださった方は、ぜひコメントなどしてください!とても励みになります!