タンバ経済研究所

世界一わかりやすい経済メディアを目指す経済系ブログ

【ミクロ経済学(9)】完全競争的な純粋交換経済の競争均衡におけるパレート効率性

概要

 前回の記事で、完全競争市場では競争均衡においてパレート効率性が成り立つということを紹介しました。しかし、その証明にまでは言及しませんでした。そこで、今回の記事では、純粋交換経済というシンプルな経済を題材として、競争均衡におけるパレート効率性の成立を証明します。

目次

純粋交換経済とは

 純粋交換経済とは、生産活動が存在せず、消費者がもともと持っている財を互いに交換するだけの経済のことです。このような経済は現実には存在しません。しかし、生産活動がない分、状況がシンプルになるので、市場分析のスタート地点としてうってつけです。そこで、今回の記事では純粋交換経済を扱うことにします。

純粋交換経済における予算制約式

 この章では、後の議論のために、純粋交換経済における消費者の予算制約式を導出します。なお、以下本記事では、この記事で財について置いた仮定を引き継ぎます。すなわち、この世には2つの分割可能財しかないという仮定を置きます。

 さて、いま、消費者は、交換前に財1、財2を e = (e_1, e_2)だけ持っていたとします。ここから、財1、財2を、価格 p = (p_1, p_2) \Delta = (\Delta_1, \Delta_2)だけ売り、 \delta = (\delta_1, \delta_2)だけ買ったとします。その結果、交換後に財1、財2を x = (x_1, x_2)だけ持っている状態になったとします。

 この時、支出 p \cdot \deltaは収入 p \cdot \Deltaの範囲内に収まっていなければならないので、 p \cdot \delta \le p \cdot \Deltaです。したがって、

 p \cdot (\delta - \Delta) \le 0

となります。この式の両辺に p \cdot eを足すと、定義より e - \Delta + \delta = xなので、

 p \cdot x \le p \cdot e

が成り立ちます。これが予算制約式です。

完全競争的な純粋交換経済における競争均衡

 この章では、純粋交換経済で完全競争市場が実現しているとき、その競争均衡において競争均衡価格と競争均衡配分がどのような性質を持つのかを論じます。

 まず、財1、財2の競争均衡価格を p^\ast = (p^\ast_1, p^\ast_2)とします。次に、この純粋交換経済には n人の消費者が参加しているとします。そして、消費者 i = 1, 2, \cdots , nが交換前に持っていた財1、財2の量を e_i = (e_{i,1}, e_{i,2})、交換後に持っている財1、財2の量を x_i = (x_{i, 1}, x_{i, 2})とします。

 さて、競争均衡の定義から、競争均衡において、各消費者は最適な行動をとっています。すなわち、任意の消費者 iは、予算制約 p^\ast \cdot x_i \le p^\ast \cdot e_i の下で効用を最大化するように x_iを決めています。そのような x_iは、この記事での議論を思い出すと、予算線

 p^\ast \cdot x_i = p^\ast \cdot e_i

と、ある無差別曲線の接点になっているのでした。この接点を x^\ast_iとします。これが競争均衡配分です。

 また、競争均衡では市場における需要と供給が一致しています。すなわち、

 \displaystyle \sum_{i=1}^n x^\ast_i = \sum_{i=1}^n e_i

です。

 以上が競争均衡において競争均衡価格 p^\astと競争均衡配分 x^\ast_iが持つ性質です。

完全競争的な純粋交換経済におけるパレート効率性

 この章では、完全競争市場が実現している純粋交換経済における競争均衡がパレート効率的であることを証明します。証明の方針としては、背理法を用います。つまり、競争均衡がパレート効率的ではないと仮定して、何らかの矛盾を導きます。

 さて、もし仮に競争均衡配分 x^\ast_iがパレート効率的でなかったとします。すると、誰の効用も損なうことなく、誰かの効用を改善することができるということになります(「効用って何?」という方はこの記事を参照してください)。この改善後の配分を、 x^\ast_i + \Delta x_iとします。

 改善後の配分では誰の効用も損なわれないのですから、すべての i = 1, 2, \cdots , nについて、 x^\ast_i + \Delta x_i \succsim_i x^\ast_iです。ここで、消費者 iの選好を \succsim_iなどで表すこととします(「選好って何?」という方はこの記事を参照してください)。さて、 x^\ast_iは、下図のように、予算線 p \cdot x_i = p \cdot e_iと、ある無差別曲線Aの接点なのでした。

競争均衡配分は予算線とある無差別曲線Aの接点になる
このとき、 x^\ast_iと同等に好ましい点は、無差別曲線A上にあります。また、 x^\ast_iよりも好ましい点は、原点から見て無差別曲線Aより奥にあります(このあたりの議論が良く分からない方はこの記事を参照してください)。したがって、 x^\ast_i + \Delta x_iは、少なくとも予算線 p \cdot x_i = p \cdot e_i上か、原点から見てそれよりも奥にあります。よって、

 p^\ast \cdot (x^\ast_i + \Delta x_i) \ge p^\ast \cdot e_i

です。さらに、 p^\ast \cdot x^\ast_i = p^\ast \cdot e_iなので、

 p^\ast \cdot \Delta x_i \ge 0

です。

 また、改善後の配分では誰かの効用は改善されているのですから、少なくとも1つの iについて、 x^\ast_i + \Delta x_i \succ_i x^\ast_iなので、上と同様の議論から、

 p^\ast \cdot \Delta x_i \gt 0

となります。

 以上のことから、

 \displaystyle \sum_{i=1}^n p^\ast \cdot \Delta x_i = p^\ast \cdot \sum_{i=1}^n \Delta x_i \gt 0 \tag{1}

が成り立ちます。

 一方、改善後の配分が実現可能であるためには、改善後も需給は一致していなければなりません。つまり、

 \displaystyle \sum_{i=1}^{n} (x^\ast_i + \Delta x_i) = \sum_{i=1}^{n} e_i

です。この式と、 \sum_{i=1}^n x^\ast_i = \sum_{i=1}^n e_iより、

 \displaystyle \sum_{i=1}^{n} \Delta x_i = 0 \tag{2}

が成り立ちます。

 ところが、式(1)と式(2)を合わせると、

 0 \gt 0

となってしまいます。これは明らかな矛盾です。したがって、競争均衡配分は、パレート効率的だということが分かりました。

まとめ

 今回の記事では、純粋交換経済を例にとって、完全競争市場の競争均衡ではパレート効率性が成立することを示しました。タンバ経済研究所では、これからも経済学に関する情報を発信していきます。この記事が良いなと思った方は、コメント、スター、ブックマーク、読者登録などしていただければ励みになります!