
概要
今回の記事では、経済学において市場分析のスタート地点として扱われる、完全競争市場を取り上げます。また、それにまつわる概念として、競争均衡やパレート効率性についても紹介します。
目次
完全競争市場
完全競争市場とは、次のような条件を満たす理想的な市場のことです。
- 多数の売り手と買い手が存在する:
非常に多くの売り手と買い手が存在するため、各売り手や買い手は財の価格を操作することができず、市場価格を受け入れるしかない - 取引される財は同質である:
どの売り手が売っている財も質が同じで、買い手にとって差がない - 売り手は自由に市場に参入・退出できる:
利益が出れば売り手は自由に市場に参入でき、損失が出れば簡単に退出できる - 売り手も買い手も完全な情報を持っている:
売り手も買い手も価格や商品の質などの市場に関する情報を完全に知っている - 取引に伴うコストが発生しない:
輸送費、交渉費などの売買に伴う費用が発生しない
このような条件を満たす市場は、現実には存在しません。ただし、農産物市場、株式市場、為替市場が比較的、完全競争市場に近いとされています。
では、なぜ、現実に存在しないにも関わらず、経済学では完全競争市場を考えるのでしょうか?それは、完全競争市場ではない、より現実的な市場を分析する際の土台となるからです。完全競争市場はとても単純な市場なので、分析が比較的容易です。そのため、より現実的で複雑な市場を分析するための足掛かりになるのです。また、以下で述べるように、完全競争市場では、需要と供給が一致する状態において、ある意味での効率性が成り立ちます。この効率性が成り立った状態を理想の状態として、より現実的で複雑な市場がどれほどこの状態からずれるのかを知ることによって、その市場の特徴や、そのずれを是正するための政策などを論じることができるのです。
競争均衡
競争均衡とは、完全競争市場において、次の条件が満たされる状態のことです。
- すべての売り手と買い手が、財の市場価格の下で、最適な行動をとる
- 市場における需要と供給が一致している
ここで、最適な行動とは、売り手は市場価格の下で利潤を最大化し、買い手は市場価格の下で効用を最大化するということです。
競争均衡は完全競争市場が長期的に到達する状態ととらえることができます。というのも、需要が供給より多い場合、財の市場価格は上がり、需要が減り、供給が増える一方、需要が供給より少ない場合、財の市場価格は下がり、需要が増え、供給は減るというような価格調整メカニズムが働くだろうからです。このような価格調整が繰り返された結果、需要と供給が一致するところで、価格変動が落ち着くと考えられます。
なお、競争均衡における財の価格を競争均衡価格といい、その時の財の配分を競争均衡配分といいます。
パレート効率性
前々章で、完全競争市場では、競争均衡においてある意味での効率性が成り立つと言いました。この効率性は、パレート効率性と呼ばれるものです。パレート効率性とは、誰の効用も損なうことなく、誰かの効用を改善することができないという性質のことです。
完全競争市場の競争均衡がパレート効率的であることは、かなり一般的な場合において、厳密に証明されています。これを厚生経済学の第一基本定理といいます。
注意したいのが、パレート効率性が成り立っている状態は、必ずしも公平性が成り立っている状態ではないということです。例えば、AさんとBさんがケーキを分け合うとしましょう。このとき、Aさんがケーキを全部取ってしまった状態は、パレート効率的です。なぜなら、Aさんの効用を改善する余地はなく、一方でBさんの効用を上げようとすると、Aさんからケーキを奪うことになるため、Aさんの効用が損なわれるからです。
まとめ
今回の記事では、市場分析のスタート地点としての完全競争市場を紹介しました。また、完全競争市場は長期的には競争均衡に落ち着くことや、競争均衡においてはパレート効率性が成り立っているということにも触れました。タンバ経済研究所では、これからも経済学に関する情報を発信していきます。この記事が良いなと思った方は、コメント、スター、ブックマーク、読者登録などしていただければ励みになります!