タンバ経済研究所

世界一わかりやすい経済メディアを目指す経済系ブログ

【ミクロ経済学(3)】消費者の消費行動の分析 ~需要関数、補償需要関数、双対性~

概要

 前々回前回と、選好の構造やその数値化について論じてきました。しかし、そこで論じられていたのは、どの選択肢が、どの選択肢より良いかということだけです。実際に消費者がどのような選択肢をとるのかについては不明でした。今回の記事では、与えられた制約下において、消費者がどのような消費行動をとるのかを考えます。

 なお、今回の記事では以下の記事の仮定を前提としますので、適宜ご参照ください。 tioe.jp

目次

需要関数と間接効用関数

 この章では、与えられた価格と所得の下で、消費者がどのような消費行動をとるのかを考えます。

 いま、財1の価格を p_1、 財2の価格を p_2、消費者の所得を Iとします。このとき、消費者の財1の消費量 x_1と財2の消費量 x_2は、

 p_1 x_1 + p_2 x_2 \le I

を満たす必要があります。なぜなら所得の範囲でしか財は消費できないからです。これを満たす x = (x_1, x_2)の集合を予算集合といいます。経済学では、消費者はこの予算集合の範囲内で効用を最大化しようとすると考えます。つまり、制約 p_1 x_1 + p_2 x_2 \le Iのもとで効用関数 u(x) ( x = (x_1, x_2))を最大化する xが実際の消費量だと考えるわけです。では、どのような xで効用関数は最大となるのでしょうか?

 下図のように、仮に、予算線 p_1 x_1 + p_2 x_2 = Iと、ある無差別曲線が接したとします。この時、その接点 x^\astにおいて u(x)は最大となることが分かります。

予算線と無差別曲線の接点が効用を最大化する
なぜなら、この時、無差別曲線の凸性より、上図で青色で示した予算集合の x^\ast以外の任意の点 \hat{x}は、すべて原点から見て無差別曲線より手前にあるからです。そのような点は、無差別曲線上の点よりも好ましくないのでした。したがって u(x^\ast) \gt u(\hat{x})となり、点 x^\ast u(x)の最大値を与えることが分かります。

 では、そのような接点は常に存在するのでしょうか?実は、この記事の仮定とそこから導き出される無差別曲線の性質を認めれば、接点は必ず1つだけ存在することが分かります。厳密な証明は省略しますが、消費平面に適当に予算線を書いて、この記事に書いたような性質を満たす無差別曲線群を沢山書くと、必ず1つの接点を持つことが直感的に分かると思います。

 以上のことから、効用を最大化する xは、予算線と無差別曲線の接点であることが分かりました。したがって、満たすべき式は、以下の2式です。

 
        \begin{align}
            &p_1 x_1 + p_2 x_2 = I,\\
            &MRS(x) = \dfrac{\frac{\partial u(x)}{\partial x_1}}{\frac{\partial u(x)}{\partial x_2}} = \dfrac{p_1}{p_2}
        \end{align}

1つ目の式は、接点が予算線上に乗っているということを意味する式です。2つ目の式は、接点において、予算線の傾きと、無差別曲線の傾き、すなわち限界代替率 MRS(x)が等しくなるということを意味する式です。

 これらの式の解は、当然のことながら価格 p = (p_1, p_2)と所得 Iに依存します。これを x(p, I) = (x_1(p, I), x_2(p, I))などと書いて、需要関数と呼びます。また、この時の効用 v(p, I) = u(x(p, I))間接効用関数と呼びます。

補償需要関数と支出関数

 経済学においては、与えられた価格において、与えられた効用の水準を満たすための最小の支出を考えることもあります。この章では、どのような xにおいて、そのような最小の支出が実現するのかを見ていきます。

 まず、問題を正確に定式化しましょう。いま、財1, 2の価格を p = (p_1, p_2)とします。次に x = (x_1, x_2)の制約条件を任意の所与の実数 uを用いて、 u(x) \ge uで与えます。この時の u効用水準といいます。この条件のもと、支出 p_1 x_1 + p_2 x_2を最小化するというのが、いま考えている問題です。

 消費平面上で、支出の等高線(支出線)は傾きが p_1/p_2の直線群で表せます。このことを考慮すると、ある支出線と無差別曲線 u(x) = uが接する時、その接点 x^\astにおいて最小の支出が実現していることが分かります(下図)。

支出線と無差別曲線の接点が支出を最小化する
このような接点は、前章と同じく、この記事の仮定を認めれば、必ず1つだけ存在することが分かります。

 以上のことから、支出を最小化する xは、支出線と無差別曲線の接点であることが分かりました。したがって、満たすべき式は、以下の2式です。

 
        \begin{align}
            &u(x) = u,\\
            &MRS(x) = \dfrac{\frac{\partial u(x)}{\partial x_1}}{\frac{\partial u(x)}{\partial x_2}} = \dfrac{p_1}{p_2}
        \end{align}

 これらの式の解は、当然のことながら価格 p = (p_1, p_2)と効用水準 uに依存します。これを h(p, u) = (h_1(p, u), h_2(p, u))などと書いて、補償需要関数と呼びます。また、この時の支出 e(p, u) = p_1 h_1(p, u) + p_2 h_2(p, u)支出関数といいます。

需要関数と補償需要関数の双対性

 ここまでの2章は、それぞれ、予算制約下での効用最大化と、効用制約下での支出最小化という別々の問題を考えていました。しかし、それらを実現する点は、いずれも、予算線ないしは支出線という傾き p_1/p_2の直線と無差別曲線の接点として与えられるのでした。この共通性から、これら2つの問題の答えは何かしら関連していることが予想できます。この章では、この関連性を導出します。

 まず、補償需要関数について、対応する支出関数を所得としたときの需要関数と一致するはずです。つまり、

 h(p, u) = x(p, e(p, u))

です。

 次に、需要関数について、対応する間接効用関数を効用水準としたときの補償需要関数と一致するはずです。つまり、

 x(p, I) = h(p, v(p ,I))

です。

 以上から、需要関数と補償需要関数の間には関連性があることが分かりました。これらの関連性のことを双対性と呼びます。

まとめ

 この記事では、2つの最適化問題を考えました。1つは、与えられた価格と所得のもとでの効用の最大化問題です。もう1つは、与えられた価格と効用水準の下での支出の最小化問題です。そして、これらの問題は、どちらも直線と無差別曲線の接点を求める問題に帰着することを見ました。また、この共通性から、これらの問題の答えである需要関数や補償需要関数が双対性により結びついていることが分かりました。需要関数や補償需要関数、双対性は今後の分析でも利用しますので、ぜひ覚えておいてください!