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【ミクロ経済学(2)】消費者の好みの形式的な数値化 ~効用関数~

はじめに

 前回の記事では、選好を特徴づける概念として、無差別曲線を導入しました。そこでは、無差別曲線は山の等高線のようなものという例えを述べましたが、その山の高さまでは定義しませんでした。このままでは数学的な分析がしづらいため、この記事では、その山の高さとして、選好の度合いを数値化した、効用関数という概念を導入します。その上で、限界代替率の効用関数による表現の導出も行います。ぜひ最後まで楽しんで読んでくださいね!

 選好、無差別曲線って何?という方は、ぜひ以下の記事をご覧ください! tioe.jp また、今回の記事でも2財モデルを仮定しているので、そちらについても上記記事をご参照ください。

目次

効用関数

 この章では、選好の度合いを数値化した関数を導入します。これを効用関数といいます。この効用関数はどのような性質を持つべきでしょうか?

 まず、選好の度合いの大きい、小さいを表現するのですから、実数値関数であるべきでしょう。

 次に、より好ましい選択肢に対しては、より大きい値を返すべきでしょう。より正確には、選択肢 x,  yと効用関数 uについて、次のようなことが成り立つべきです。

  •  x \succsim yならば u(x) \ge u(y)
  •  x \succ yならば u(x) \gt u(y)
  •  x \sim yならば u(x) = u(y)

 注意してほしいのは、これらの条件は、効用関数をただ一つに定めるものではないということです。実際、一つの効用関数の候補u(x)から、他の効用関数の候補をいくらでも作れることが次のようにして分かります。

 いま、効用関数の候補u(x)に単調変換 fを施した関数

 \hat{u}(x) = f(u(x))

を考えましょう。ここで単調変換とは、 u \gt vならば f(u) > f(v)が成り立つような変換のことです。すると、

  •  x \succ yならば u(x) \gt u(y)なので f(u(x)) \gt f(u(y))より \hat{u}(x) \gt \hat{u}(y)
  •  x \sim yならば u(x) = u(y)なので f(u(x)) = f(u(y))より \hat{u}(x) = \hat{u}(y)
  •  x \succsim yならば x \succ yまたは x \sim yなので上記2つより \hat{u}(x) \ge \hat{u}(y)

ということが分かります。1つの効用関数の候補に様々な単調変換を施せば、効用関数の候補は無数に作ることができるのです。

 以上のことから、同じ選好に対して、効用関数の候補はいくつもあることが分かりました。では、これらの候補のうち、どれを本当の効用関数として採用すべきなのでしょうか?答えは、「何でもよい」です。効用関数の値自体には経済学的な意味はなく、あくまで選好の度合いを形式的に数値化したものにすぎないのです。ですから、分析に応じて使いやすいものを使えばよい、ということになります。

限界代替率の効用関数による表現

 前章で、効用関数の値自体に経済学的な意味はなく、あくまで形式的なものだと言いました。しかし、効用関数を使って経済学的に意味のある量を表現することは可能です。この章では、その例として、効用関数で限界代替率が表現できることを示します。

 まず、消費平面上の点 x = (x_1, x_2)に注目し、この点における限界代替率 MRS(x)を考えることにします。限界代替率は、下図のように、 xを通る無差別曲線上で xからほんのわずかに離れた点を x' = (x_1 + \Delta x_1, x_2 - \Delta x_2)とした時、 MRS(x) = \Delta x_2 / \Delta x_1で与えられるのでした。

無差別曲線と限界代替率

 この時、 x'における効用関数の値は、 u(x') = u(x_1 + \Delta x_1, x_2 - \Delta x_2)です。いま、 \Delta x_1 \Delta x_2は微小なので、

 \displaystyle u(x') = u(x) + \frac{\partial u(x)}{\partial x_1}\Delta x_1 - \frac{\partial u(x)}{\partial x_2}\Delta x_2

と書けます。

 ここで、 x x'が同一の無差別曲線上に乗っていたことを思い出すと、効用関数の定義から、 u(x') = u(x)なので、上式は、

 \displaystyle 0 = \frac{\partial u(x)}{\partial x_1}\Delta x_1 - \frac{\partial u(x)}{\partial x_2}\Delta x_2

となります。

 ここからすぐに、以下が分かります。

 \displaystyle MRS(x) = \frac{\Delta x_2}{\Delta x_1} = \frac{\frac{\partial u(x)}{\partial x_1}}{\frac{\partial u(x)}{\partial x_2}}

こちらが、限界代替率の効用関数による表現です。

 さて、前章で議論した通り、効用関数はいくらでも別の形が取れるのでした。では、このとき、限界代替率は変わってしまうのでしょうか?これは経済学的におかしな話です。実は、次のようにして、効用関数として別のものを使っても、限界代替率は変わらないことが示せます。

 いま、同じ選好に対する別々の効用関数 u(x) \hat{u}(x)の関係が変換 fにより、

 \hat{u}(x) = f(u(x))

のように表せるとします。この時、 \hat{u}(x)による限界代替率の表現 \hat{MRS}(x)は、

 \displaystyle \hat{MRS}(x) = \frac{\frac{\partial \hat{u}(x)}{\partial x_1}}{\frac{\partial \hat{u}(x)}{\partial x_2}} = \frac{f'(u(x))\frac{\partial u(x)}{x_1}}{f'(u(x))\frac{\partial u(x)}{\partial x_2}} = \frac{\frac{\partial u(x)}{x_1}}{\frac{\partial u(x)}{\partial x_2}}

となり、 u(x)による限界代替率の表現に一致します。効用関数によって限界代替率が変わりはしないのです。

おわりに

 この記事では、選好の度合いを形式的に数値化した効用関数という概念を導入しました。また、同じ選好に対して効用関数がいくらでも取れることを示しました。そして、経済学的な意味を直接は持たない効用関数から、経済学的に意味のある限界代替率が導けることも示しました。タンバ経済研究所では、これからも経済学に関する情報を発信していきます。今回の記事をここまで読んでくださった方は、ぜひコメントなどしてください!とても励みになります!